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不動産テック系の論文を読みました【BuildSense: Long-term, fine-grained building monitoring with minimal sensor infrastructure】

今年のBuildSys2017で気になる論文があったので読んでみました。
BuildSysっていうのは建築系のCSに関する学会です。
その中の1つを簡単に說明してきます。
タイトルを検索してもらったら原稿が公開されているので詳しい内容や図が見たい方は、そちらも合わせて読むがいいと思います。


どんな研究か
物理センサ、仮想センサを用いて建物を長期間監視するためのフレームワーク BuildSenseを提案・評価したという研究
ここでいう物理センサというのは実際におくセンサのことです。
仮想センサと言うのは、実際には置かないセンサつまるところ予測するセンサです。
⇨物理センサーの設置コスト管理コストを削減した上で目的に有った正確性と安定性を実現した。


なんでこういう研究が必要になるのか
日本ではどうかわからないけど、アメリカだと建造物からの消費エネルギー量が全体の2割になります
こういった建造物のエネルギー量を減らそうという話になった時に、方法としては以下の2つがある。
1:消費するエネルギーを最適化する(例:人が居ないのに電気付いたり空調を使ったりとか)
2:エネルギー効率の良い構造の家にする(例:断熱材、最新の空調機とか)
2とか建築系とかリノベ系のお話
今回はエネルギー効率を良くする方向で進める場合、建物内にセンサを設定して建物情報を取ろうという話になる
ただ、これをやる場合の一番の問題は設置コストと管理コストになります
情報量を多くしようと思ったら当然、必要となるセンサの数は多くなります。
なので現在の屋内センシングの1つの方向性として設置するセンサをいかに少なくしていくかというのがアプローチとしてあります。
それで、この研究も実際には設置してないんだけども、データが取得できる仮想センサと言うものを用いることで管理コストの削減を行っています。


どういうところが優れているのか
当然なんですけど、物理センサを仮想センサとして置き換えるという考えは前からありました。
ただ、この研究が以前の研究と異なっているのが、設置するセンサの選び方に有ります。
この仮想センサというは、予測してデータを取得します。
その予測というのは実際に存在する物理センサを元に予測します。
たとえば仮想センサAの値を予測するために、物理センサAとCのデータが必要になるとします。
当然センサは、故障したりします。そういった場合でも正常に仮想センサを動作させるためにセンチネルという監視用のセンサを用意しておきます。
このセンチネルを用いて物理センサと仮想センサに異常が起きていないかを確認します。
これが、許容する誤差を超える場合にはユーザに修理の通知を送ります。
もう1つは、一年を通してこの手法が通用するという点です。
屋内なので当然、時期によって環境が変わります。
今回の手法でやったら一年を通しても、そこまで大きな誤差が出なかったよとのこと


実験と評価について
評価実験にはオーストラリアのカルグーリという地域で行われました。
使用したお家は2つのタイプが合って、断熱材のあるものと無いものです。
建物の各所にセンサが設置されていて全部で150個ほどあります。
そのセンサからデータを収集・学習・仮想センサと物理センサの選択を行います。
14ヶ月間、予測値と実測値を比較して、全期間の8割のデータが誤差1度以下で動作したようです。
あと、どれだけの期間でやったのかはわかりませんが、一度以下の誤差であれば7割物理センサが必要なかったとのことです。


感想
今回の手法だと、仮想センサにするセンサを選ぶ前に、そもそもセンサを多数屋内に設置する必要が出てきます。
そのおかげで、どのセンサを予測できるのかということが出来るわけなんですが、
少なくとも一度は設置・回収を行わなくてはいけないんですね。
管理コストは劇的に少なくなるかもしれませんが、現実に落とし込むとナンセンスかなというのが個人的な感想です。
あと、一年間計測して誤差を見て8割以上のデータが誤差一度以下として安定して取れたと書かれていたんですけども、環境が限定的すぎて他のところはどうなのかなと。
今回の実験で使った家はオーストラリアのカルグーリという地域で実験を行いました。
オーストラリアの気温と降水量
比較的暖かい地方ということで、寒暖差が激しかったら反対の季節の誤差が大きそうな気がします。
ただ、仮想センサの値を求める方法が比較的にシンプルで、結構予測できるというのが面白かったです。
やり方としては、仮想センサAと物理センサBとCの差から求めてるみたいです
単純にその時間帯だけじゃなくて、24時間前まで遡って、その時間帯も含めて計算しているみたいです。
それに使ったのは単純にインフラとして設置された温度センサだけみたいですので、消費電力や家電の温度センサ、スマホの温度センサなど連携して幅を広げれば、結構強そうです。
実装も難しくなさそうですし、機会があればやってみたい。